第三夜 長い夜(後編)

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   背中に弓を背負い、右手にオードリーのムチを持ってジンは駆けた。  右上から邪夢の触手が三本同時に伸び上がり、青い帽子に向かって振り下ろされる。その先端には全て青白い矢が突き刺さり、青の残光を空中に描いて床を叩く。  薄暗い部屋の中では黒くて早い触手は視認するのが困難だが、青白い光矢がそれを容易い物に変えて居た。無論彼ら夢防人の戦士達の卓越した戦闘技術と、長きに渡る経験からの予測もある。  ジンは空中に飛び上がり、それを躱しざまにムチを振るう。  床に転がる剣を絡ませ跳ね上げる。回転しながら飛来する剣を、絡まったムチの先を伝ってキャッチし、左手に装備する。  空中から落下し始めた身体を、右手のムチを再び振るい、今度はベッドの足に絡ませる。  体重が極めて軽い小人の身体は少しの負荷で容易に飛び上がり、遠心力を使えばさらに加速する事が出来た。  ムチを使う戦士から学び取った事は、空中での直線的な移動と、曲線的な移動技術だった。  それは北東部のこの田舎では画期的な物である。  邪夢の上まで飛び上がり、ベッドを蹴りながら軌道を変える。  ムチを三度振るいオードリーを捕らえた触手に絡ませる。  引き寄せると同時に自らもオードリーの元へと飛来する。 「オードリー!」  名前を呼びながらオードリーの肩を右腕に抱きしめる。強く。  同時に左手の剣を触手に突き刺さった矢の束を目掛けて叩き込み、入った亀裂を崩壊させる。
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