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役目を終えた剣は宙に投げ捨て、両腕でオードリーの身体を抱きかかえながら、邪夢の頭に着地する。
すぐさま飛んで来る触手の攻撃を躱すため、ささやかな御返しの意味を含めて邪夢の頭頂部を力強くジンは蹴った。
空中に踊り上がりながら両腕でしっかりとオードリーを抱きかかえ、床に着地する。
マサルが駆け寄って来る。
「やった!凄いよジン!!」
歓喜の声を上げながら近寄ると、ジンが叫びながらベッドの下に走り込む。
「油断するな!一度身を隠そう!」
ジンが走る背中をマサルが追う。
その直後を触手が掠めて行った。
オードリーの顔色は蒼白で生気のカケラも無かったが、まだ息はあるようだ。
マサルは部屋の隅に隠れられる隙間があるとジンを案内した。それは10センチほどの、壁と家具の隙間で、前を物で塞げば邪夢にも見つからずに済みそうであった。
ジン達はその隙間に飛び込む。
入口を塞げそうな物が今は見当たらないので諦めて少しでも奥に身体を隠した。
床のホコリを払い、ジンは右腕にオードリーの頭を支えながらゆっくりとその身体を下ろす。
マサルが自分の帽子を丸めて枕代わりにオードリーの頭の下に敷いた。
「ジン……様……」
来てくれた。
声にならない吐息が零れる。
薄く目を開けたオードリーは、微かに笑みを浮かべた。
マサルが安堵する。
「オードリー!良かった!」
「ごめん、僕たちのせいだ。今すぐ応急手当てをするから安静にしてて」
ジンはオードリーに笑顔を向けて言うと、自分の腰に巻いたポーチから小さい夢珠を二つ出した。
「マサルも出して。あとオードリーもどこかに持ってるはずだ、マサル、捜して」
「わかった」
小さい夢珠は食料でもあり、小さな怪我なら治せる効果がある。そのため誰でも一つか二つ、携帯している物だった。
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