第1話 倫子再び

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そう言って一華は、妖艶に微笑んだ。 謎めいた微笑、と言うのか…。 元々大きくて吸い込まれそうなセピア色の瞳が、 妖しく輝いた。 不覚にも、倫子は見惚れてしまい… (私のが美人よ!) と慌てて自らを奮い立たせた。 それから倫子は、 しばらく家庭に落ち着いていた。 …2ヶ月ほど…。 しかし、 夫は浮気を辞める気配は無い…。 年が明けて1月半ば過ぎて… ふと気付けば、 来月はバレンタイン…。 バレンタインと言えば、男♪ このまま家に居たら、 美しい私は宝の持ち腐れよ! 女は、見られて美しくなるもの。 でも、SNSはもう主人もやってるから…。 なんか癪よね… 「!」 倫子は閃いた! まずは、 あの一華の周りの男をターゲットにすれば良いのよ! 嘘か本当か知らないけど、 天使に魔族の知り合い。 …てそれはおいといて、よ。 あれだけ人間離れした美貌の持ち主と知り合いなんだもの。 他にも美貌なお知り合いは居る筈。 ま、一華の彼氏なら猶更、 奪い甲斐あるしね♪ と言う事で、 一華の行動を見張る事にしたのだ。 一華の自宅の最寄り駅は知っている…。 そんな訳で、 駅で張り込む事初日…。 午前10時頃… なんとラッキーな! 一華は今日はオフの日だったらしく、 通勤とはまた違う装いで駅に向かって来たのだ。 いつも、紺やグレーのパンツスーツ姿で、 黒いコートでの出勤が多い一華は、 今日はパステルブルーのニットワンピースに、 ベージュのカシミヤのコート、 茶色いブーツ姿で軽やかに歩いて来たのだ。 こっそりと後をつけると、 一華が乗り込んだ電車の隣の車両に乗り込んだ。 本を読むフリをしつつ、一華を監視する…。 空いている時間帯なのが幸いして、 見失う心配が無さそうだ。 一華は2度程電車を乗り継ぎ、 六本木駅で降りた。 途中、気付かれたかも? と感じた瞬間は何度かあった。 不審そうに一華は倫子の方を見るのだ。 だが、それだけだった。 一華はそのまま真っすぐ歩き続ける。 少し歩くと、 喫茶店へと入って行った。 コッソリ後をつける倫子…。 「ご相席ですね」 と一華は席に案内されていく。 …相席?誰と待ち合わせしてるのよ? 「いらっしゃいませ! お好きな席へどうぞ」 倫子はすぐに声をかけられ、 なんてついてるのかしら? と内心ガッツポーズをしつつ、 こっそりと一華の斜め後ろの席に座った。
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