30人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言って一華は、妖艶に微笑んだ。
謎めいた微笑、と言うのか…。
元々大きくて吸い込まれそうなセピア色の瞳が、
妖しく輝いた。
不覚にも、倫子は見惚れてしまい…
(私のが美人よ!)
と慌てて自らを奮い立たせた。
それから倫子は、
しばらく家庭に落ち着いていた。
…2ヶ月ほど…。
しかし、
夫は浮気を辞める気配は無い…。
年が明けて1月半ば過ぎて…
ふと気付けば、
来月はバレンタイン…。
バレンタインと言えば、男♪
このまま家に居たら、
美しい私は宝の持ち腐れよ!
女は、見られて美しくなるもの。
でも、SNSはもう主人もやってるから…。
なんか癪よね…
「!」
倫子は閃いた!
まずは、
あの一華の周りの男をターゲットにすれば良いのよ!
嘘か本当か知らないけど、
天使に魔族の知り合い。
…てそれはおいといて、よ。
あれだけ人間離れした美貌の持ち主と知り合いなんだもの。
他にも美貌なお知り合いは居る筈。
ま、一華の彼氏なら猶更、
奪い甲斐あるしね♪
と言う事で、
一華の行動を見張る事にしたのだ。
一華の自宅の最寄り駅は知っている…。
そんな訳で、
駅で張り込む事初日…。
午前10時頃…
なんとラッキーな!
一華は今日はオフの日だったらしく、
通勤とはまた違う装いで駅に向かって来たのだ。
いつも、紺やグレーのパンツスーツ姿で、
黒いコートでの出勤が多い一華は、
今日はパステルブルーのニットワンピースに、
ベージュのカシミヤのコート、
茶色いブーツ姿で軽やかに歩いて来たのだ。
こっそりと後をつけると、
一華が乗り込んだ電車の隣の車両に乗り込んだ。
本を読むフリをしつつ、一華を監視する…。
空いている時間帯なのが幸いして、
見失う心配が無さそうだ。
一華は2度程電車を乗り継ぎ、
六本木駅で降りた。
途中、気付かれたかも?
と感じた瞬間は何度かあった。
不審そうに一華は倫子の方を見るのだ。
だが、それだけだった。
一華はそのまま真っすぐ歩き続ける。
少し歩くと、
喫茶店へと入って行った。
コッソリ後をつける倫子…。
「ご相席ですね」
と一華は席に案内されていく。
…相席?誰と待ち合わせしてるのよ?
「いらっしゃいませ!
お好きな席へどうぞ」
倫子はすぐに声をかけられ、
なんてついてるのかしら?
と内心ガッツポーズをしつつ、
こっそりと一華の斜め後ろの席に座った。
最初のコメントを投稿しよう!