第2話 愛のハンター倫子

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(どちらを先にモノにしようかしら?) 倫子は凌駕と光輝両方モノにするのだが、 先にどちらを落とすかを妄想していた。 「ギャーッ!!!」 いきなり白いものが倫子の額に飛びかかってきた。 倫子思わず悲鳴を上げて尻もちをつく。 額に痛みが走る。 それはシュタッと華麗に地に降りた白猫だった。 倫子は額を右手で抑えると、 何やらヌルッとした感触が…おそるおそる右手を見ると、 「いやーっ、血!私の美しい顔に…!」 倫子はパニックになると同時に、 美しい自分の顔に傷をつけた白猫に殺意が湧いた。 「このクソ猫めがっ」 と立ち上がり、右足で蹴ろうとした。 だが、白猫は素早く逃げ去る。 追いかけようとする倫子の背後から、 「大丈夫ですか?」 と心配そうに話しかける柔らかい声がする。 もしや…この声の主は、と期待し、 慌てて笑顔を作り倫子は振り返った。 心配そうに倫子を見下ろす光輝が、 倫子の目に映った。 「私の猫が、申し訳ございません」 と謝罪しつつ、右手を倫子に差し出す。 これは、一気に彼に近づけるチャンス! と感じた倫子は、 「いいえ、大丈夫です」 としおらしく答え、オズオズと彼の手を取った。 光輝は彼女を引っ張り上げ立たせると 「あなたの額!大変だ!あなたの美しい顔に傷つけてしまった! 本当に申し訳ない」 光輝は白衣の胸のポケットから 白いガーゼハンカチを取り出し、 倫子の額に当てた。 左手はさり気なく倫子の背中に添えている。 「あの、大丈夫ですから」 倫子はあくまでおとなしく上品に振る舞う。 何故なら、光輝は清楚で大人しいタイプが好きそうだからだ。 「私の猫が、美しいあなたを傷つけてしまった。 どうか私に償いをさせて下さい。 是非、我がクリニックで治療を!」 と光輝は悩まし気に倫子を見つめた。 びびびっ、と倫子の心臓に電流が走る。 (これは運命の出会いよ。 「愛のハンター倫子」の異名を持つこの私、 今こそ、その力を魅せる時よ!) 倫子の瞳に、ハートの炎が燃えた。 そんな倫子を、 少し離れた椅子から 凌駕は冷たい笑みを浮かべ、 一華は呆れたようにして見ていた。
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