チョコレート『短編』

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寒々とした夜。心もとない電灯の下。今にも雪が降ってきそうな雰囲気を纏った夜空を見上げ、あたしは、頭を空に向け、口を大きく開き、ハーっと、白い煙を吐き出した。 ものすごく白い煙が出て、あたしが吐いた息にもかかわらずギョッとなった。夜だから、余計に白い煙は目立ち、 側からみたら、タバコ吸ってるんじゃね?と見えるかもしれない。 けれど、このゆりかもめ公園にはあたししかいない。ゆりかもめという呼称の公園だけあって、かもめのオブジェクトがあちらこちらに散りばめてある。かもめの大きさはだいたい本物くらいの大きさで、公園の古さに伴い、かもめもかなり老朽している。 (色、白色、塗ってあげたらいいのにな) 声には出さなかったけれど、心の中で呟いた。 星は出てはいない。ハー、ハー、息を吐き過ぎてしまったせいで、一種の二酸化炭素中毒になりそうになり、頭を正面に戻し、呼吸を整える。 腕に巻かれた時計に目を落とすと、20時58分を示していた。 約束の時間は21時だ。 内藤くんの家は、この公園から、徒歩で約3分。 (来るのだろうか) ドキドキしてはいるが、来ないほうの思考に比重があり、来る前から来ない定でのあきらめモードなので、あまり期待はしてはいない。 内藤くんがまさかあたしに呼び出されるなんて、微塵たりとも思ってはいないのだから。
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