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私は思った。
(やはりアレなのか?ってか言えよ、先生)
「かいだんですか?」
クラスメイトの男子が答える。
「そう、かいだんだ。よく分かったね」
「よくメガネをかけないで下りようとしたら転びそうで怖いので」
「そっちの階段かよ。ホラーの怪談じゃないのかよ。肝試しやるだろ?泊まり会でキャーキャー言うだろ?幽霊に会うだろ?」
みんな黙り込む。
「悪ぃ、最後はなしだ」
「はい?梨田です」
そこに梨田と呼ばれた女子生徒が立ち上がって言う。
私は思った。
(こいつ、寝てただろ)
「いや、君ではない。ってか梨田寝てたよな?」
「白いチョークに先生の指から血が流れるのをじっと見てたら先生の首が落ちた夢を見てました」
(どんな夢だよ。怖ーよ!!)
先生がチョークを持って笑って言う。
「見てろよ?そんなこと生まれて一回もないから」
先生はチョークで一筋の線を書く。
書き切れ終えて止まった瞬間、チョークに赤いものが流れた。
「痛っ!!」
急に静かになる教室。
「なんで黙る。おい、俺の頭あるよな?肩から上に付いてるよな?なぁ?」
「先生、安心して下さい。ついてますよ」
梨田さんが答える。
「良かった。そう、話は戻してホラーがブームになった。君たちの中に知ってる者もいるだろう。六条御息所という人物を。あれは幽霊となって出てくるだろ。それだけではない。髪の毛や爪もよく呪いとして扱われてきたのも平安時代だ。そういうわけで本当に首あるよな?」
「先生、しつこいです」
梨田さんが言う。
「うぉ、俺の両手が真下に見える!!」
「先生、うざいです」
(梨田さーん!!今のはなしだろ?梨田さんだけに)
「では、『またね』とはどういう風に扱われたか?『またねずみが走ってるよ。あっ、ホラーしなきゃだよ』の略だ」
(うん……どんな発想だよ!!)
「なるほど。そんな歴史があるのですね」
そう言う梨田さんも他の生徒たちも納得する。
「そして戦国時代では凛々しく『達者でな』という言葉になって言ったが、徐々に『またね』とも両方扱われるようになった。その時の『またね』は『また、殺し会おうね』の略だ」
(ケンカ口調の略かよ!!)
「それが戦前……敗戦まで使用された。そして戦後の『またね』は平和の意味を込めて『また会おうね』になった」
(うん、無難に治ったな)
「だが、平成になった現在。意味はたくさん増えた」
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