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「例えば?」
女子生徒が聞く。
「例えば……『また熱出てきたよ。焼肉食いに行こうぜ?』とか『また彼女にフラれたよ。よし、今日は寝るかぁ』の略だな」
(色々な『またね』の略があるな。ってか熱出たなら休めよ。焼肉食いに行こうぜ、じゃねーよ)
「じゃあ、『来年もまた会いましょう』とかも『またね』の略なの?」
(普通……もう、ここまで来ると普通が何か分からないけど、再開的に扱うなら有り得るだろ?)
「それはなしだ」
「はい、梨田です」
「いや、お前じゃない」
(そのフリもういいわ。ってか梨田さん、起きててちゃんと話を相打ちするかのように首で縦に振ってたよね)
「すみません。目を開けて寝てました」
(梨田さん……)
「またねするなよ。あっ、『また寝るなよ』の略で『またね』だ」
(知るかよ!!)
「話を戻すとだな。『また来年会いましょう』の『またね』は使えない。なぜなら、俺がここで言ったらみんな明日学校に来なくなった夢を見た。理由はそれだけだ」
(お前の基準かよ!!)
「こんなに話されると『またね』という意味が分からなくなるだろう。しかし世の中は便利になった。辞書というモノが簡潔で正しく書いてある。それに従って扱うとよい。それ以外は何があろうともダメだ。そして私の名前は又根清(またねきよし)、通称『またね』先生だ」
(おい、さっきまでの話は無駄になった終わり方だろ、それ。ってかこれ自己紹介だったのかよ!!)
「よし、じゃあ、終わるか。ちゃんと明日も来いよ」
そしてこの日は入学式の当日にも関わらずこんな感じで終わった。
その後、教室に来ない者は一人もいなかったのである。
黒板の前にいる、またね先生の顔を見ながら。
もちろん、頭は取れてない。
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