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「なんだこれは……?」
目の前に居る、この化け物は何だ?
「……」
私を見据えている。あまりの威圧感に足が竦む。
こんな生物、存在するのか。それとも誰かのいたずらか。
だとしたら着ぐるみか、それともホログラムのような投射機なのか。
……しかし、見れば見るほど奇妙だ。二足歩行だが、人間ではなさそうだ。いや、それどころか生物なのかも分からない。
「……!?」
今、化け物が一歩踏み出したような気がした。
下半身は、ボロボロのマントで包んであるので足は見えないが、そんな気がしたのだ。
「ああ……」
なんということだ。あれはなにか良くないものに違いない。私の直感が、そう告げた。
あの存在から離れよう。そう思って踵を返した時だ。
「うわあっ!」
私の目の前に、身長二百センチはありそうな、大柄な人物が立ち塞がった。……そう、あの化け物は、いつの間にか私の目の前に居て、立ちはだかっている。
「だ……誰かぁぁ!」
私はまた踵を返して走り出した。今度は先回りはされなかった。
ふと、後ろを向くと、化け物がどんどん遠ざかっていく様子が見えた。
良かった、逃げられる。そう思った瞬間だった。化け物は、空中を滑るように体をスライドさせて、凄いスピードでこちらへと向かってきた。
そして、手に持った鎌を……あろうことか、私に向かって振りかざした。
「や……やめ……!」
首に激痛が走り、目には鮮血が映る。私の血だ。わた――しは――。
「フン……フフフン……フン……」
梓(あずさ)は自宅でお茶出しの準備をしている。自宅といっても、梓の自宅は神社なので、梓は巫女服を着ている。
巫女服は、梓の稼業であるオカルト便利屋のユニフォームのようになっているので、梓はほぼ一日中、赤と白の巫女服を身に着けているのだ。
「うん!」
お盆の上には二つの小皿がある。それぞれの小皿の上には、カットした梨と二股のフォークが置いてある。茶碗も二つあり、その中には、ちゃんとお茶っ葉が入れてある。お湯の入ったポットは縁側に置いてあるので、持っていかなくても大丈夫だ。準備完了である。
梓はお盆を持つと、杏香が居る縁側へと向かった。
縁側には、外から差し込む日差しで髪が一層オレンジ色に見えている杏香(きょうか)の姿があった。
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