1話「呪詛連続殺人事件のはじまり」

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「お茶、入りましたよ」 「あ、悪いわね」  杏香の髪は、風になびいてさらさらと揺らめいている。髪質はさらさらで、綺麗なウェーブの髪だ。オレンジ色に見える髪は、太陽の光に当たって、更にオレンジ色っぽく見える。  梓は常々、その髪がどうしてこんな色なのか、不思議に思っているが……杏香本人が言うことには、生まれつきの地毛なのだそうだ。 「よいしょ」  梓は杏香の隣に座って、お茶を入れた。  そして、杏香と一緒に一口お茶を飲むと、本題に入った。 「それにしても死神とは、物々しいですね……」  杏香は今日、梓へ仕事の依頼をするために来たらしい。最近、死神のような風貌の何者かによる連続殺人が行われているということだ。 「そう。警察はそう呼んでいるわ。被害者の連れが悲鳴を聞き付けると、そこにはたった今首を跳ねられた被害者と……」 「死神のような化け物ですか……」 「ええ……目撃証言は少ないし、いずれも去り際の一瞬を見ただけだから、それくらいしか手掛かりが無いけど……あと、これ」 「これは……」  写真には、被害者の手が映っている。手の下には血だまりがあり、被害者の手は血だまりの外を指さしている。その指の先にはアルファベット「GO」と書かれている。  この様子からすると、被害者が死に際に描いたものだろう。 「ダイイングメッセージともとれるみたいだけど、本当のところは分からないわね」 「死人に口無しですか……」 「そういうこと」 「文字は、筆記体みたいですね」  文字はかなり乱れていて読みにくいが、なんとか読み取れる。死に際に急いで書いた様子がまざまざと現れている。 「ええ。急いで何かを伝えたかったのか、それとも単なる気まぐれか……若しくは、文字ではない何かか……」 「うーん……いずれにしても、なんともいえないですね。大部分は血で分からなくなってるし」  GOのすぐ隣には血だまりができている。もしかすると、GOは何かの一部だとも考えられる。
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