1話「呪詛連続殺人事件のはじまり」

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「心霊遊びの間違いで、これほどの大人数が被害に遭うという事もあり得はしますけど……考えづらいですね。それだったら、呪いの方も考えられます。呪いの類も暴発すると、思いもよらない事が起こりますからね。心霊面でも呪いの面でも考えられないこともないですが、でも……」 「でも?」 「人間に出来ない犯行でもないです。首を切ってまわる連続殺人犯なんて、やっぱり考えづらいですけどね」 「うん……だから、警察も最初は捜査してたんだけどね。でも、捜査は難航してて、このままじゃ迷宮入りしそうだって。まあ、だからあたしの所に話が来たんだけどね」 「なるほど」 「難航してる原因は、一つは切断部が鋭すぎる事。刃物と、それを扱う人、どっちも相当、質が高くてね、とても人間業とは思えないって」 「なるほど……そんな事ができる人は限られてますね」 「ええ。状況証拠から見当がつく範囲の人には、そういった人は居ないし……で、もう一つ。証拠があまりにも残されていないって事」 「証拠ですか」 「凶器とか、指紋とか……DNA鑑定に使えるような類のものも、一切残されていないの」 「そうですか……でも、逆に言えば、質の高い刃物を持っていて、刃物を使う腕もあり、証拠を残さないくらい用意周到な人が居れば、霊能や呪術関係ではないって事ですね」 「ええ。ほぼ不可能だけど」 「んー……今回は色々と絞れないですね。他に何か証拠はないんですか?」 「そうね……どっちも証拠とはいえないような事だけど……少しだけ法則性があるの」 「法則性?」 「殺人は必ず二人づつ、近い期間に行われているの。場合によっては、短い期間に連続で四人なんてこともあるけど……それがどうしてなのかは、ちょっと分からないけどね。犯人の拘りなのか、止むに止まれぬ事情があるのか……。それから、夕方以降に集中して行われているってことかな。だけど、やっぱり、それが分かったところで何の手掛かりにもならないんだけどね」 「んー……それはむしろ、犯人を絞り込むために、警察側に有用な情報に見えますけど……それが分かったからって特には手掛かりにはならないってことですか」 「そ。どっちも犯人を絞るには荒い情報なのよ。今回は、犯行の動機も見えないから、その分容疑者の母数も多いし……決定的な証拠も見つかってないしね」
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