2話「ミズキの魔法」

2/6

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 ――ピピピピ……ピピピピ……。 「うーーーーん……あーーーー……」  今日もまた、目覚まし時計の電子音が鳴った。うるさい。  ――ピピピピ……ピピピピ……。 「あーー……うるさいなぁ……」  ――ピピピピ……ピピピピ……。 「昨日遅かったから、もうちょっとだけ……」  ――ピピピピ……ピピピピ……。 「瑞輝(みずき)ー! 早く起きないと遅刻するわよー!」 「あれ……?」  瑞輝が睡魔を振り払い、時計を見る。目覚まし時計のスヌーズは何故か切られていて、時間は瑞輝の想定よりも十五分ほど遅く表示されている。  秒の表示を見る限り、時計は正常に作動しているようだ。おぼろげながら、自分がスヌーズ機能を止めた事も覚えている。この事実が示すことはつまり……ギリギリに起きるつもりが、ギリギリの十五分後に起きたという事だ。 「ち、ちょっとちょっと!」  瑞輝は急いでクローゼットを開けて、制服に着替えた。この制服にもようやく慣れてきたので、着替えは素早く終えることができた。急いで鞄を手に持ち、半ば突進するように部屋の扉を開け、廊下へ躍り出る。 「ええと……よし!」  頭の中に、さっと自分を思い浮かべる。 「水よ、我が身を包み、その千変万化の力をここに……ライアービジュアル!」  自分の男の時の姿を、できるだけ細部まで想像しながら、瑞輝は魔法を唱えた。 「行ってきまーす!」  瑞輝は急いで階段を駆け下りると、そのままの勢いで玄関の扉を開けた。 「今日も相変わらず高い声ねー、まだ慣れないわ」 「そろそろ慣れてよ。じゃ、行くから!」  急いで玄関の扉を閉めて、扉越しに叫ぶ。 「明日はもう少し早く起きなさいよ!」 「うん、分かったから! じゃ、行ってきまーす!」  急がないと。だらだら話していては、学校に間に合わない。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加