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――ピピピピ……ピピピピ……。
「うーーーーん……あーーーー……」
今日もまた、目覚まし時計の電子音が鳴った。うるさい。
――ピピピピ……ピピピピ……。
「あーー……うるさいなぁ……」
――ピピピピ……ピピピピ……。
「昨日遅かったから、もうちょっとだけ……」
――ピピピピ……ピピピピ……。
「瑞輝(みずき)ー! 早く起きないと遅刻するわよー!」
「あれ……?」
瑞輝が睡魔を振り払い、時計を見る。目覚まし時計のスヌーズは何故か切られていて、時間は瑞輝の想定よりも十五分ほど遅く表示されている。
秒の表示を見る限り、時計は正常に作動しているようだ。おぼろげながら、自分がスヌーズ機能を止めた事も覚えている。この事実が示すことはつまり……ギリギリに起きるつもりが、ギリギリの十五分後に起きたという事だ。
「ち、ちょっとちょっと!」
瑞輝は急いでクローゼットを開けて、制服に着替えた。この制服にもようやく慣れてきたので、着替えは素早く終えることができた。急いで鞄を手に持ち、半ば突進するように部屋の扉を開け、廊下へ躍り出る。
「ええと……よし!」
頭の中に、さっと自分を思い浮かべる。
「水よ、我が身を包み、その千変万化の力をここに……ライアービジュアル!」
自分の男の時の姿を、できるだけ細部まで想像しながら、瑞輝は魔法を唱えた。
「行ってきまーす!」
瑞輝は急いで階段を駆け下りると、そのままの勢いで玄関の扉を開けた。
「今日も相変わらず高い声ねー、まだ慣れないわ」
「そろそろ慣れてよ。じゃ、行くから!」
急いで玄関の扉を閉めて、扉越しに叫ぶ。
「明日はもう少し早く起きなさいよ!」
「うん、分かったから! じゃ、行ってきまーす!」
急がないと。だらだら話していては、学校に間に合わない。
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