2話「ミズキの魔法」

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「待って! 朝食!」 「あ、そうだね」  瑞輝が立ち止まって、玄関のドアを開ける。 「はいトースト!」 「投げて!」 「お行儀悪いわよ!」 「間に合わないから!」 「全く……」  瑞輝の母がトーストを投げる。  瑞輝は母から投げられたトーストを受け取り、急いで玄関を飛び出した。 「どれどれ……」  トーストを口にくわえつつ、手は鞄の中に突っ込んで、鏡を取り出す。 「うーん……」  手に持った鏡で、顔を映す。顔は特に精巧に再現しないといけない。 「あぁあぁあな……?」  口にパンを加えているので全然発音できていないが、「まあまあかな」と言った。これならかなり近くで見られても違和感が無いと思う。及第点だろう。瑞輝は納得して、スマートフォンの時計を見た。 「この間よりも余裕、あるな」  この間、遅刻しそうになった時の事が思い出される。そう、瑞輝が異世界から帰って間もない時だ。あの時も、こんな感じでばたばたとしながら学校へ向かっていた。 「急ごう」  余裕があるといっても、この間に比べたら、というだけだ。ギリギリアウトな時間な事に変わりはない。 「どうしようかな……」  異世界で転生したおかげで魔法が使えるようになったのは便利だが、以前の瑞輝とは全く別の姿に……女の子になってしまったので、結局、魔法で姿を変えて誤魔化すことになった。  なので、魔法は使えるが、変身が解けて女の子の姿になってしまう。その対策として、女子用の制服を着て、制服ごと姿を変えるという事をやっているので、他人のふりをして誤魔化せはするのだが……変身の魔法はかけ直さないといけない。  ダブルキャストを会得すれば、変身したまま一つだけ魔法を使えるのだが、相当練習しないと会得できないらしい。
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