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オカンの部屋の扉が開いて、Tシャツ&スパッツ姿に衣替えしたオカンは、僕を見るなり、
「あんた、いつまでそんな格好でグズグズしとん!さっさと着替えて早う学校行きいや!ホンマ恥ずかしい」
と、今度は真顔で言った。
「わかった、わかった。
もう行くから」
「わかったは1回でいい」
「はいはい」
「はい、も1回!
2回言うと、話半分しか聞いてません!
と自分から言うてるようなもんや。
返事は一回にしとき!」
朝っぱらからやかましいなぁと思いつつ
「はい、わかりました」
と丁寧に返事をしておいた。
長くなりそうだし。
僕は飲み干したマグカップをシンクに移し、空っぽの牛乳パックを平らに潰して、カレーパンの包紙と一緒に冷蔵庫脇のゴミ箱に捨てた。
「おお、やればできるやない」
振り向くと、今度はオカンの顔が笑っていた。
「なんや、気色悪い・・・」
そうつぶやきながら自分の部屋に戻って制服に袖を通した。
机の上に無造作に置いてあった薄っぺらのカバンを手に取り、部屋を出て、リビングと短い廊下を通り抜けた。
「ほな、いってくるわ」
といって玄関の扉を開けた。
背中越しにオカンの
「いってらっしゃい。
今日もいっぱい楽しんできいや!」
という声が聞こえたものの、ドアが閉まる音と共に、すぐに蒸せるような暑さに襲われた。
「あ・・」
踵を返して、今閉まったドアを少しだけ開けた。
「オカン、俺の部屋のエアコンつけっぱなしやったわ。スイッチ切っといてや!」
「うん、わかった、切っ・・」と微かに聞こえて来る声を遮るように、ドアは閉まった。
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