1.オカン

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オカンの部屋の扉が開いて、Tシャツ&スパッツ姿に衣替えしたオカンは、僕を見るなり、 「あんた、いつまでそんな格好でグズグズしとん!さっさと着替えて早う学校行きいや!ホンマ恥ずかしい」 と、今度は真顔で言った。 「わかった、わかった。  もう行くから」 「わかったは1回でいい」 「はいはい」 「はい、も1回!   2回言うと、話半分しか聞いてません!  と自分から言うてるようなもんや。  返事は一回にしとき!」 朝っぱらからやかましいなぁと思いつつ 「はい、わかりました」 と丁寧に返事をしておいた。 長くなりそうだし。 僕は飲み干したマグカップをシンクに移し、空っぽの牛乳パックを平らに潰して、カレーパンの包紙と一緒に冷蔵庫脇のゴミ箱に捨てた。 「おお、やればできるやない」 振り向くと、今度はオカンの顔が笑っていた。 「なんや、気色悪い・・・」 そうつぶやきながら自分の部屋に戻って制服に袖を通した。 机の上に無造作に置いてあった薄っぺらのカバンを手に取り、部屋を出て、リビングと短い廊下を通り抜けた。 「ほな、いってくるわ」 といって玄関の扉を開けた。 背中越しにオカンの 「いってらっしゃい。  今日もいっぱい楽しんできいや!」 という声が聞こえたものの、ドアが閉まる音と共に、すぐに蒸せるような暑さに襲われた。 「あ・・」 踵を返して、今閉まったドアを少しだけ開けた。 「オカン、俺の部屋のエアコンつけっぱなしやったわ。スイッチ切っといてや!」 「うん、わかった、切っ・・」と微かに聞こえて来る声を遮るように、ドアは閉まった。
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