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起きたいときに起きて、食べたいときに食べたいものを食べる……。もともとの健人の性質もあるけれども、そうしてしまったのは、誰でもない和香子だった。
出会った頃の健人はきちんと毎日働いていたし、和香子と同棲を始めるまでは自分の力で生活をしていた。
健人が生きる能力をなくし、一枚の絵を描き始める気力も削いでしまっているのは、和香子の存在なのかもしれない。
仕事が終わり、疲れた和香子がマンションに帰ってくると、健人は出かけていて、部屋には明かりが灯っていなかった。
ここのところ健人は留守にしていることが多く、夜遊びをしているのか、遅くになって帰ってくることもしばしばだった。
「そうか……。私がダメにしてるんだ……」
暗い部屋の中で、ポツリと和香子がつぶやいた。
その夜、健人はいつ帰ってきたのか…。翌朝和香子が起きたら、健人は居間のソファーで眠っていた。
伸び放題の髪に、何日も剃られていないヒゲ、ヨレヨレのシャツを着る健人は、本当にホームレスのようだった。
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