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和香子はそれを手に取って、ため息をついた。思っていた通り、健人は全然動じていない。きっとまた夜遅くになって、ひょっこりと帰ってくる。
…と思っていたけれど、その日、健人は帰ってこなかった。
それでも和香子は、健人が帰ってくると信じて疑わなかった。今までだって、健人がふらりと出て行ったきり、何日も帰ってこないことはあった。健人が帰ってくる場所は、ここしかないはずだ。
しかし、和香子のそんなタカをくくった思考も、一週間も経てば揺らいでくる。
和香子のマンションには、健人がちょっと帰ってきた痕跡も見つけられず、電話もメール一本の連絡もしてこなかった。和香子の方から連絡を取ろうと思っても……、
「……そうか。健人の携帯は、この前ヤンキーに壊されてたんだっけ……」
別れようと言いだしたのは誰でもない和香子なのに、〝健人がいない〟ということが現実味を帯びてきて、にわかに焦り始めた。
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