358人が本棚に入れています
本棚に追加
「今、全県模試の事務局から連絡があったけど、我が校の英語の得点の一部が入力されてないらしい!」
進路指導主任が血相変えて、三年部へと駆け込んできた。進路を計るために重要な模試であることもあって、三年部にも緊張が走る。データを見直してみたら、和香子が担当するクラスの得点がすっぽり抜け落ちていた。
「…え。私、入力しました」
和香子が戸惑ったような声をあげたので、さらに調べてみると、どうやら和香子は別の考査のシートに入力してしまっていたようだった。
「申し訳ありませんっ!!」
和香子は進路主任や迷惑をかけた教員たちに謝ってまわり、早急にもう一度点数のデータを送り直す手続きをして、疲れ果てて職員室の席へ戻ってきた。
「大変だったね。…でも、しっかり者の石井さんらしくないね。このところ、体調でも悪いの?」
そう言って、古庄は気遣ってくれたが、和香子はただ首を横に振って答えるだけだった。
普段の自分だったら考えられない失敗。
この失敗は、辛うじて保っていた和香子の心の均衡を、一気に揺るがしてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!