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その女性は紛れもなく和香子だった。
窓辺にたたずむその姿は、天女の羽衣のような薄衣を身にまとっただけの裸身で、乳房にあるホクロも、太ももの内側にある小さな赤いアザも、細部にわたって忠実に描き込まれている。
「やだ!見ないでください!見ないでくださいっ!!」
和香子は真っ赤になって絵に覆いかぶさるように、絵に描かれているヌードの自分を、両腕を伸ばし全身で隠した。
「お客様、展示品にはお手を触れないでください!」
和香子の行動を見咎めた美術館の係員から声をかけられても、和香子はそこから動こうとはしなかった。押し問答のようになって、却って周りにいる観覧者の目を引いてしまう。
「……和香子?観に来てくれたんだ?」
その時、懐かしい声が響き渡った。和香子が振り向くと、美術館の係員の背後に、健人が立っている。
亜麻色の髪もヘーゼルの瞳も、周りから浮き立つように際立っていて、健人の姿こそ一枚の絵のようだった。久しぶりに会う健人はヒゲも剃って少しだけキチンとしていて、和香子の胸は今更ながらにときめいて、ドキドキと鼓動を打った。
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