0人が本棚に入れています
本棚に追加
12月24日。今年もこの日がやってきた。僕は普段、父と二人で経営する会社で保険の外交を担当してるんだけど、毎年この日には大切な予定がある。
所属する商工会青年部のイベントで、申し込みがあったお宅の子供達に、あらかじめ預かっておいたプレゼントを配達するんだ。もちろん、サンタのコスチュームを着てね。
今年一緒に配達するメンバーは七人。約七十件を受け付けてるから、一人頭ざっと十軒は回らなきゃならない。
完全にボランティアで予算の限りもあるから、お世辞にもクオリティーの高いサンタとは言えないと思う。それでも、毎年毎年子供達は、最高の笑顔で迎えてくれた。
いつのまにか僕は、今日という日が本当に楽しみになっていたんだ。
「スマンな、新婚さんをイヴの夜に引っ張っちまって」
「いやぁー、いいんです。クリスマスと言ってもウチの子は、まだ何もわからない赤ん坊ですし」
「おいおい、子供はそうでも 奥さんが寂しがってるんじゃないのか?」
「うーん……どうなんでしょう?付き合ってる時から、イヴと言えば商工会サンタになっちゃってますからね」
デキ婚……最近じゃぁ授かり婚って言うのかな。結婚して一年目、こないだ長女が生まれたばかりだった。
「先輩こそいいんですか?息子さん悲しんでるんじゃあ…」
「ハハ…ウチのボウズなんて、プレゼントさえ貰えりゃ 俺なんていない方がいいに決まってるさ。それに、青年部長の俺が、この大仕事をほっぽり出すわけにいかないだろう?」
高校の先輩でもある部長の指示で、それぞれの担当ルートが決まる。僕は今夜、駅通り方面を配達する事になった。
幸い保険の担当をしているお宅も多いエリアで、配達名簿に載ってる子供達の顔も何となく浮かんできた。
「あー、スマンがこの箱は、やっぱりお前が届けてくれ。ちょうどルート終わりに寄れるはずだ」
「え? あ…はい、じゃあ持っていきますね」
「頼んだ。さあさあ、子供達が楽しみに待ってる。みんな、今年も最高のサンタクロースになってきてくれ!」
最初のコメントを投稿しよう!