とけるもの

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ひとひらの雪が俺の手袋にとまった。 ほかに見るものもないので視線を向けると、それは雪というよりも一粒の結晶だった。朝の光をうけてきらめく六角形は、息をのむ間に溶けて丸い水滴に変わる。 一瞬の出来事になにが起こったのかよくわからなかった。思わず、同じくバスを待っているアマモリの背中を叩いていた。 「ん?」 「いま…あっ!ほら、やっぱり見間違いじゃない」 今度はコートの袖についた雪もやはり結晶だ。しかもひとつではなく、いくつもの歪な六角形が寄り合わさっている。 「結晶!コレ!あァ水になった」 「なんだよ?わかるように話せ」 「雪が結晶なんだ!」 「お前それ…小学生でも知ってるから」 馬鹿にされたくらいでは高揚した気分はさがらない。 アマモリのニットキャップに降り落ちた雪だって、きっと結晶だ。 俺は背伸びをして大男の頭上に手を伸ばした。見てないくせに知識だけで偉そうなことを言われるのは癪だ。
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