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「お?」
カーキ色のニットキャップをつかもうとした腕は目的を達成することなく遮られてしまったけれど。
「見てから言えよな!実物見たら、まじで感動するから!」
「なにムキになってんだよ…」
アマモリはそう言うと腰を曲げる。ぐっと近づいた距離に一歩下がろうとしたら肩を持たれて動けなかった。
なんだこの状況!
間近な顔面をそろりと見ると、細めた目で俺の顔ではなく髪を凝視しているようだ。
「んー、あぁ。そうな、確かに結晶だ」
「だ、だろっ」
「で?」
説明を求められている。結晶を見ていたはずの瞳がこちらを向いていた。
「近ぇよ!」
無表情で見つめられることに耐えられず手のひらで目の前の顎を持ち上げた。
「見ろっつったから見たのに」
「べつに俺についたの見なくていいだろ」
歯切れ悪く言っているとバスが到着したので、「ほら乗るぞ」とでかい図体を押した。
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