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「いいよ、べつに殺されても。 お前になら。 だけど死んでもこの手は離さない」
手首を握る指先にぎゅっと力を込め、トキが言う。
「バカだよね?」
「お互い様だろ?」
二人して、くすくす。 笑い声をもらしながら、触れる肌を通して、自分と相手の胸のうちに潜む情熱を思い知る。
お互いの中に流れる濃い血は、受け継いだそれぞれの熱い想いを混ぜあい、今も全身を駆け巡っている。
もう運命を呪いはしない。 この奇妙な巡り合わせを。
自分の目の前に相手がいること。 触れられる場所にこの人がいること。
不幸だなんて言ったら、きっと罰が当たる。
本当は私たちは、ずっと昔から知ってたかもしれない。 気づいていたのかもしれない。
この子がいるから、少しは幸せ。
一人じゃないから、わりと幸せ。
何でも話せるから、かなり幸せ。
「好きなんだよ? 愛してるのも嘘じゃない。 わかるだろ?」
トキが甘えるように額をこすりつけてきたので、私は目を閉じて言っていた。
「ねぇ。 キスしてよ、早く」
【END】
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