―相楽 美緒―

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戸惑う私の指先に何かが触れ、瞬間はっと我に返る。 「ちょっと何? 外で手つながないでよ!」 「いいじゃん、仲直りの儀式だろ?」 トキは何か知らんが得意顔。 こっちの不意をついて、してやったりなつもりですか? 「やだ、やめて! 人に見られたらヤバいから!」 振りほどこうとしてブンブン暴れるも、絡まって離れない相手の指先。 「だって先輩のことは諦めるって、この前……」 「だからって、トキとつきあうとは一言も言ってない!」 「じゃ仲直りのキスくらいならいいだろ? 人の見てないとこでするから。 ほら、もう部屋着いた」 どういう思考回路をたどれば、そんな発想になるのか教えてほしい。 「相変わらず煩悩まみれだよね? あんたの脳内!」 言ってやったら、にやり。 半笑いで、トキが部屋の鍵を開ける。 「それが男ってやつだろ?」 「認めるな! 否定しろ!」 つないでないほうの手で殴りかかろうとしたら、そのまま強引に玄関に引き込まれ、体ごと壁に押しつけられた。 バタンッ! 音を立て、肩の隣でドアが閉まる。
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