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 朝、何だか胸騒ぎのする夢から醒めるとベッドの中の自分が毒虫になっていた…………と、言うと有名なザムザの物語の始まりのようだが、今僕はそんなような心持ちでそれをまじまじ見ていた。  白くて、光沢はなく、それでいて空を少し反映しそうなそれを、はっきりと何だか認識していた。 「骨、だね…………」 僕はぽつりと呟いた。目の前にあるそのもののように乾いた声がだった。 「確かに骨だ」 地面からぬっくと出ているそれはともすれば直ぐに崩れてしまいそうな脆さで、でもいくつかは鋭利な刃物の鋒の如く様子で……………………確かに僕の骨だった。  そう、気が付いたら僕は昔懐かしい河原で、「僕」と対峙していた。どうして、こうなったのかとんと分からない。  初めの内は呆気に取られて、どこの馬の骨とも分からないそれが自分のものであると思うのかその理由を求めて眺め回したのだが、見れば見るほど、成程自分の骨だと思うのだ。  全く不思議なものでいつこうなってしまったのか、そう、こうして僕が骨を見ていると言うことは僕は死んでしまったのか、それともこれはなんともキテレツ極まりない悪夢なのか…………などと考えながら朝露がじんわりと染み込んでいく骨を見ていた。  何の変鉄もないただの骨だった。ただ僕だっただけの…………それが外から眺めると何だか愛らしい。 ――ああ、そういえばあの時食べたおひたし…………  不意に駅前の寂れた定食屋を思い出した。良くおばちゃんが出してくれたのだ、ほうれん草にしらすのおひたしを。 「若いんだから、ちゃんとバランス良く食べなさい…………そんな肉ばっかりのメニューだと身体に毒だからねぇ」 見た目に反してガッツリとハンバーグとエビフライとか、焼き肉とか生姜焼きとか炭水化物と肉のメニューだった僕の定食には何故かいつもほうれん草のおひたしが無料でついていた。ほうれん草は苦手だったけどその上のしらすにつられて、後優しい味付けにつられて食べていたなぁと思うのだ。 「カルシウム食べないと怒りっぽくなるからねえ」 はおばちゃんの言だが、身体の割にしっかりした骨はしらすが効いていたり…………なんて思わなくもない。
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