〈二〉

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 速めすぎてカーブミラーの前で顔面蒼白になって立ち尽くしている女をひき殺しそうになった。 「は……はは……」  なんだかよくわからねえ。きっと触れちゃいけない人種の女なんだと思った。がしかし容姿は悪くねえ。はだけた胸元からロケットみてえな乳の素肌がサブリミナル効果の如く下半身へと鮮烈に刺激してきた。どうだろう、この女。手元にある30万で抱けやしないだろうか。  いやなに、金がなくなりゃまたスロットで取り戻せばいい。 「おいコラ、お前そんなところで何やってんだ」 「……んん?」  俺の、つま先からオツムまで、ねっとりと睨ねめ上げる様は売女のようでもあり、キ印認定するのには今一つ説得力に欠ける仕草。 「頭イカれちまったか? 家はここらへんなのか?」 「そうだよ、あはは」 「なにがアハハだ。クソッタレが。昨日から碌な人間に会ってねえや」  類は友を呼ぶのか、そう言いかけて言葉を噛み殺した。 「……風邪ひくぞ」  その女のあまりの狂いっぷりが逆に少女ふうな魅力を掻き立てていたからか、昨日の晩残虐にあしらわれ嬲り尽された俺の脳髄が渇きを覚える。欲しい、欲しい、この狂った女を手籠めにしたい。反芻してやっと気づく。とっくに俺だって狂ってる。 「俺の名前は深谷。お前は?」 「わたしはねえ、深淵ちゃん」 「普通自分のことをちゃん付けで呼ばねえと思うが……なるほどオメエは普通じゃねえな」 結論から言うと俺は彼女を抱いた。部屋に連れ込むと乱暴に、ガサツに抱いて、彼女の中へ子種を解き放ってじっくり煙草を味わいながら毛布にくるまった裸体のソレを足蹴にした。ヤニで黄ばんだ壁に目をやり、横に視線を滑らせていくとさして興味もないのに買ってしまったファッション雑誌が目に入ったから、彼女に取ってくるよう命じてふと思い当たる。 「お前、四つん這いになれよ」
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