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ラブホテルの糞ののたうち回ったみたいなネオンが、糞をぶちまけたようなどす黒い夜空に光っている。オッサンから手渡された裸の万札を、受け取ると。
「へへ、毎度あり」
安いタイツを引き裂かれた彼女をタクシーの中へ押しやるとドライバーに自宅の住所を告げた。深淵と出会って5日目。すでに目標額の50万円。いや、100万円。達成していた。出会い系サイトで手ごろなオッサンを捕まえては彼女と割り切った関係を持たせた。中には随分羽振りの良い客もいて、そいつはひとりで総額50万出した。
「ねえ、こんなのもうやめたい……」
「なに言ってんだお前。これからが正念場だろ? 今日のオッサンみてえな汚えヤツばっかじゃねえんだから、な? 気持ち入れ替えていこうぜ?」
深淵は憔悴しきっていた。俺ははじめ、こいつをドラッグクイーンかなにかだと思っていたが案外まともなところがどこかに残っていたらしい。むしろ、そのほうが扱いやすかった。
まともってのは、弱さだ。
そこにうまくつけ込めば、言いなりになっちまう。
こいつみてえにな。
札束で、頬を二三度ひっぱたいてやると、そっぽを向いて路傍の石のほうがむしろいとおしいような態度をとる。
俺のボロアパート前に着いて、引っ張り出すと反抗的な目をこちらに向けたからコンビニ袋に入ったカルボナーラを地面にぶちまけ、深淵に食わせる意思がないことを示してやると大っぴらにうめき声を上げながら泣き出してしまった。
「俺は、この金でやるべきことがあんだ。今晩は帰らねえと思うが、逃げだそうだなんて思うなよ?」
彼女の携帯電話のストラップを摘んでプラプラさせながら威圧する。部屋に入って定位置――えんじ色の布団にへたり込んで、目を伏せて彼女は服を脱ぎだした。
「すまねえが、今晩は抱く気にはなれねえ」
吐き捨てて玄関のカギをガチャリと締めた。
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