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寒い寒い、とマフラーの隙間で呟いてると、幼なじみは自分の頭に乗せていたニット帽をわたしにかぶせた。
大きいから、おでこも耳も、隠れてしまう。
わかってる。本当は、なんだか、背も、行動も、言葉も、表情も、もうすっかりこいつは大人みたいだって。
こどもはわたし。
でも、いいじゃない。こどもみたいだって、大人みたいな幼なじみには、ちょうどいい。
だから、未だにこいつには、彼女がいない。
「咲(さき)」
……今年は早めに渡そう。
「はい、義理チョコ」
「……」
そう。毎日朝、一緒に登校するから。
だから、誰よりも先に、あげられる。
「…………」
……と、思って渡してるのに、受け取らないし、何も言わないし、なんなんだよこいつは。
なんか文句あるのか?赤の箱がいやなのか?それともなに、まさか、本当にマズイのか?
「ちょっと、咲!?」
「え!あ、おう!」
な、なにか問題でもあるのか?
やっと赤い箱が咲の手に渡ったのに、まだ不安。
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