未熟な恋の、真っ赤な実

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まだ、わかんないけど。 これからも、わかんないかもしれないけど。 いつわかるか、わかんないけど。 「わたしも、バレンタイン、咲以外のひとに作るなんてありえない」 義理チョコ、だったけど。 ずっとそう思いながら作ってたけど。 「よかった。同じ気持ちじゃん。幼なじみってさー、わかりにくいよなあ。ずっと一緒にいたから今さら恋とかわかんないし、でも、他のヤツには埋めらんないものがいっぱいある。だからずっと、一緒にいたい、花々緒と」 同感だ。 確かに、恋かなんて本当にわかんないけど、他のひととするよりも、咲がいい。咲じゃないと、ダメ。 「そ、そうだね」 「なら、よそ見すんなよ」 わたしの頬をぺちっと小突いて、咲は笑った。 よそ見すんなよ……か。 いつもこんな近くにいるんだ、よそ見するヒマもスキマもないでしょう。 いつか、キスとかしたりするのかな。変なの。でも、咲以外とするほうがもっと変に感じてしまうのだから、幼なじみってやつは、本当に厄介だ。 「……来年は義理じゃないやつ作るよ」 厄介だから、これからは、ちょっとは、恋にしていきたい。 箱も、来年はピンクにしてみようかな。 今年も、義理チョコ。 来年はちがうチョコ。 「うん、楽しみにしてる」 わたしのバレンタインデーは、いつだって、咲のためだけに。 □おしまい□ ハッピーチョコレートデー!
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