未熟な恋の、真っ赤な実

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そんな、甘さの欠片もないわたしたちの間にも、わたしの心優しい性格のお陰で毎年2月14日にはバレンタインのチョコレートを、3月14日にはホワイトデーのクッキーを渡すのが恒例になっている。 それは、小学校低学年の頃のわたしの慈悲の気持ちからはじまった義務。 当時は、チビで鈍くさくて、鼻垂らしたガキだったあいつが、バレンタインでひとつもチョコを貰えずに泣いているのを目撃してしまったわたしが、本当にしょうがなく、哀れみを込めてチョコレートをあげたのがきっかけ。 そんな何年も前のことをやり続けてあげるわたしも偉いと思う。 そりゃ、もう流石にいいだろうって、あげなかった年もある。あれは去年の、高2の時だ。彼女はいないものの、あいつはだいぶモテるようになったし、と思って作らなかった。そうしたら、あいつはすごい変な顔をしながらこう言ってきた。 「おまえの手作りチョコなんて家族と俺以外誰も食えないくらいマズイんだから、俺が食ってやれるうちに作っとかないとかわいそうだろ。明日まで待ってやるよ」 なんて失礼なヤツだ。
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