未熟な恋の、真っ赤な実

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そう。わたしの慈悲からはじまった義務を、あいつは何を勘違いしてるのか、自分の慈悲だと思っていたんだ。 なんてバカなんだろう、わたしの幼なじみは。 空手なんかとっくにやめて女の子らしくなったわたしは、中学では調理実習の時に先生の補佐を任されるくらい料理が上手いと評判だった。その影響で、高校は3年間料理研究部だ。 そんなわたしのバレンタインチョコレイトがマズイ?冗談はやめてほしい。バカにもほどがある。それか、本当に味音痴なのか。 とにかく、腹が立ったわたしは、その年はなにも作ってあげなかった。 あいつは、残念、って様子もなく、来年は期待してると言った。まるで、あげるのが当たり前とでも言うように。 むかつく。本当に、変な風に成長してしまった。昔はもっとかわいかったのに。 赤い箱でラッピングしたチョコレートが似合うくらい、かわいかったのに。 「見ろよ、雪だよ花々緒(かかお)」 不意に名前を呼ばれ、はっと顔をあげる。 目の前には、今年初めて積もった雪を見て笑ってる幼なじみがいた。 「はいはい、雪ですねー 寒いですねー」 「寒くて機嫌わるくするなんて、花々緒もこどもだなあ」 「はしゃぐほうがガキだろ。いちいちうざい」 「はいはい」 昨日まで春みたいな空気だったからやしょうがないじゃない。全部雪のせいだ。
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