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「なによ、何か変!」
「あ、ああ、去年くれなかったから、今年もなかったらどうしようかと思ってたから」
「あんたが、わたしのチョコはマズイから、自分か家族しか食えないって言ったんじゃない」
責任持って食べてほしい。
マズイにしろマズくないにしろ、今年も、わたしはあんたにしかあげる相手がいないんだから。
「…ありがとう」
「おいしくめしあがれ!」
「おいしいよ、いつも。一昨年のガトーショコラも、その前の紅茶クッキーも、その前のシフォンケーキも、初めてくれた時の、生チョコも」
「……え、咲、マズイって言ってたじゃん」
咲にほめられるの、なんだか、変。
なんで、初めてあげた時のものまで、覚えてるの。
「本当にマズかったならべつに嘘つかなくてもいいよ」
「マズイって言ったのは!おまえが、去年くれなかったからだろ!」
「は?毎年あげるだけ有難いと思え」
「他のヤツにあげるのかもって思ったから!」
……は、他?
他って、咲じゃない人ってこと?
あいにく、わたしにはまだ、咲以外の誰かに赤い箱を渡す自分なんか想像もできない。
わたしはもう18歳なのに、彼氏どころか、恋だってしたことがないんだから。
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