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「え、イヤミ?咲も彼女いない歴年齢のくせに…」
そう。何故かわたしたち、恋人が出来ない。特に咲なんて、モテるのに。
「花々緒、よく聞け」
「なに」
「俺、おまえ以外考えられない」
「何が?」
「……俺、まだ恋とかわからないけど、これから先も花々緒じゃない誰かのチョコレートを待ち望むとは思えないんだよ」
わたしたちは、腐った縁の幼なじみ。
咲のことはだいたい知ってて、咲もわたしのことはだいたい知ってるの。
ずっとずっと、そばにいた。
これからもなんだかんだで近くにいるんだと思う。腐った縁だし。そりゃ、同じ大学とか会社とかはウザすぎるからイヤだけど、近くにはちゃんといるんだと思う。
わたしたちのバレンタインなんて、甘さの欠片もなかったのに。
「花々緒もそう思わない?」
きっと今、あの赤い箱の中身を一口食べてみたら、甘くて胸焼けしてしまう。
わたしのチョコレイトがおいしいからじゃない。わたしたちが一緒にいた長い時間の片隅で、わたしたちは気づかない程度に少しずつ、恋をしていたのかもしれない。
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