板チョコ――勝負のゆくえ

2/4
前へ
/28ページ
次へ
88円だった、自分のおやつ用にコンビニで買った板チョコ。 片方の手には、紙袋3個分の貰ったお菓子。もう片方にはその板チョコをグッと握りしめて、あたしは下駄箱に向かった。 なにが起きても あたしはこのチョコをあいつに投げてバイバイしてやる。 当たって砕けろあたしの初恋。 …なんて。 行く勇気がわいたのは、亜芽が「行かなきゃ後悔するから、がんばってきなよ」って言ってくれたからなんだけど。本当はこわくて今にも踵を返して逃げ出しそう。 下駄箱につくとまだあいつは来てなかった。靴に履きかえようと靴箱を開けると、ラッピングされたお菓子が8個も入っていた。 「ふえた…!」 そういえばあいつと、チョコの数勝負してたんだっけ。思い返してみると、けっこう、楽しかったよなあ。いつものバレンタインより気がラクになれた。 「峰藤鈴!待たせたな!」 「本当だよ……って一人??」 なんで二人きりの状況にならないといけないの。 「当たり前だろ。なぁ、チョコ何個だった?」 「なんだ、結果発表が目的か」 「まーな」 なんだ。…なんだ、そっか。 ホッとしたような、なんか少し、残念なような…。 「46個…」 「げっ!同じじゃん」 「え!どーすんの」 てゆーかそもそも何のために勝負したんだっけ。もともと、何かを賭けてたわけじゃない。 「…なんで吉井沢は勝負なんて持ち出したの?」 ふと疑問に思う。 だって、勝負なんてしなければきっと好きにならずにすんだのに。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加