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88円だった、自分のおやつ用にコンビニで買った板チョコ。
片方の手には、紙袋3個分の貰ったお菓子。もう片方にはその板チョコをグッと握りしめて、あたしは下駄箱に向かった。
なにが起きても
あたしはこのチョコをあいつに投げてバイバイしてやる。
当たって砕けろあたしの初恋。
…なんて。
行く勇気がわいたのは、亜芽が「行かなきゃ後悔するから、がんばってきなよ」って言ってくれたからなんだけど。本当はこわくて今にも踵を返して逃げ出しそう。
下駄箱につくとまだあいつは来てなかった。靴に履きかえようと靴箱を開けると、ラッピングされたお菓子が8個も入っていた。
「ふえた…!」
そういえばあいつと、チョコの数勝負してたんだっけ。思い返してみると、けっこう、楽しかったよなあ。いつものバレンタインより気がラクになれた。
「峰藤鈴!待たせたな!」
「本当だよ……って一人??」
なんで二人きりの状況にならないといけないの。
「当たり前だろ。なぁ、チョコ何個だった?」
「なんだ、結果発表が目的か」
「まーな」
なんだ。…なんだ、そっか。
ホッとしたような、なんか少し、残念なような…。
「46個…」
「げっ!同じじゃん」
「え!どーすんの」
てゆーかそもそも何のために勝負したんだっけ。もともと、何かを賭けてたわけじゃない。
「…なんで吉井沢は勝負なんて持ち出したの?」
ふと疑問に思う。
だって、勝負なんてしなければきっと好きにならずにすんだのに。
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