板チョコ――勝負のゆくえ

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「ばーか。好きなヤツに素直にかわいいなんて言えるかよ」 「…い、今言った…!」 「言ってねーよ」 「言ったぁ…」 なんだ なんだ、吉井沢、あたしのこと好きなんだ。かわいいって思ってるんだ。 吉井沢にそう思われてるってだけで、うれしい。 「…入学式のときにお前、俺の定期拾ってくれたじゃん。そのとき俺、自分よりかっこいーヤツ初めて見たって思って。それが女だって知って、最初は悔しかったんだけどさ、お前目立つからよく見てたんだよ。そしたら、実はすげぇ女らしいところがあって…好きになった」 「…っ吉、」 「チョコ、くれよ。お前のが一番ほしい」 ねぇ吉井沢、あたし、バレンタインがあってよかったって初めて思ったよ。 「鈴、俺にくれよ。 毎年ずっと俺だけに」 ありがとう吉井沢。 バレンタインの幸せを、あたしに教えてくれて。 「…」 「板チョコ…俺、初めて人から貰ったわ」 「っ仕方ないじゃん!」 「どのチョコよりも甘そー」 フッと笑って、あたしをときめかせる。 「これで47個目。俺の勝ち!」 「ず、ずっる!」 「鈴、かわいーな」 顔を、ラッピングよりピンクにさせて あたしを甘くさせる バレンタイン、あたしは包装されてないそのままの恋の味を、初めて知りました。
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