選別作業場へ

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選別作業場へ

2週間経ったその日、私は柿の種に、隣の50代のおじさんのアドバイス通りチョコ掛けをしていたが、いつまで経っても完成できず、一人でチョコ掛けをしていた。他の作業員達は片付けが終わり、休憩に入っていた。 ある程度チョコを掛けてかき混ぜ、柿の種1粒を計りに掛けて重さを量るのだが、重さがなかなか規定の1.7gにとどかない。 私はとうとう嫌になり、重さが1.4gしかなかったが出来たことにして、勝手に作業をやめて片付けをして休憩に入った。 休憩が終わった後、50センチ程のアルミ缶にチョコ掛けをした柿の種を入れていき、だいたい6缶ぐらいになるのだが、私がチョコ掛けした柿の種は軽いため、5缶しか入らなかった。そのため、若い女の社員に、 「ちゃんと計ったんですか?」 と聞かれ、私は、 「天に誓って、ちゃんと計りました。」 と答えた。 翌日、私は選別作業に回された。その時は、 「ラッキー、もう二度とチョコ掛けなんかするもんか!!」 と、喜んだ。 しかし、この選別作業もなかなかの曲者だった。 選別作業は、以前まで私が作っていた、チョコ掛けした柿の種や、マーブルチョコを良品と悪品に分ける作業だった。作業場に行くと、以前、チョコ掛けで陰口を言われていた村上さんもいた。 村上さんは、物覚えが悪く、教える社員の若い男はイライラしていた。そのイライラした状態で、次に私が教えられ、私はまだ1回しか教えてもらってないのに、 「こうやってやるんですよ、早くして下さい!!」 と怒られてしまった。その時、私は村上さんに殺意を覚えた。心の中で、 「この人の次は絶対ダメだ!!次回は、この人より先に教えてもらうようにしよう。」 と思った。 そして、その日の後半から、私は、契約社員の皆に嫌われている、口うるさいおばちゃん担当の、マーブルチョコの選別に回された。超高速でテーブルの上を滑っていくマーブルチョコに、傷が入っていたり、欠けているのを見つけて取り出さなければならない。 はっきり言って無理だ!!こんな物、選別なんかできるわけがない!!プロボクサーでも無理だ!! また、テーブルが低く、男は背中を曲げるので腰に負担がかかる。皆に嫌われているおばちゃんは、小柄で、テーブルの高さと腰の位置がフィットしていた。まさに、このおばちゃんのための選別作業場だった。
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