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10粒のマーブルチョコ
私が腰の痛みに耐えながら、適当にマーブルチョコの選別をするなか、このおばちゃんは、的確にマーブルチョコを選別していた。
悪品のマーブルチョコは、毎回1万個はあったと思うが、私は10粒しか貰えなかった。これらは全部、豚の餌になるということだった。
私は、この嫌われているおばちゃんに、
「まだ、マーブルチョコの選別が、アルミ缶2つ残っています。」
と報告して、おばちゃんは適当に聞き流したか、聞こえてなかったか分からないが、とにかく返事を
「はい。」
とした。
それから少しして、おばちゃんが、
「まだアルミ缶2つ分残ってるじゃん、ちゃんと見てよ。」
と言ってきた。そのとき私は、腰がマックスに痛くて、ついついおばちゃんに、
「さっき言ったじゃないですか!!ちゃんと聞いて下さい!!」
と、怒鳴ってしまった。
それから、このおばちゃんは、私にだけは優しかった。そして、このチョコレート工場の派遣を辞めるときに、このおばちゃんに、マーブルチョコの悪品を10粒貰ったのであった。
友達とか親に、今、チョコレート工場で働いていると言うと、チョコレートに囲まれていいなあ。とか、毎日チョコレートの匂いを嗅げていいなあ。と言う。チョコレート工場の若い親切な社員達は、アーモンドにチョコ掛けをしながら、仕事が楽しくてしょうがない。と言っていた。派遣社員の多くの人達も、ここはうるさい人がいないからいい、いつまでもここで働きたいと言っていた。
しかし、私は2度とゴメンだ。あの真夜中に、柿の種にチョコ掛けをしていた光景だけは忘れられない。あと、契約社員のおばちゃんのゴム手袋が破れ、みんなでそのゴム手袋の破片を探し回ったのも忘れられない。おばちゃんは、半泣きになっていた。結局、その破片を何とか見つけたが、その破片の大きさは、僅か直径2ミリ程だった。
私は結局、12月の1ヶ月だけ働いてやめた。12月は、社員の忘年会がある日も休みになり、確か給料は手取り10万無かったと思う。
2月のバレンタインが終われば、たいていの派遣は切られると言われ、早々と次の派遣先を紹介してもらった。
時給850円 土日・祝日休み 交通費なし
結局、次の派遣先も重労働で低賃金、作業着も支給してくれない製造業の会社だった。
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