プチイベ慰安旅行

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プチイベ慰安旅行

手引きを片手に旅館を後にし少し歩くと、前方から人が向かってくるのが見えた。 距離が縮まり顔を確認できる程になり、初めてそれが源氏攻撃班班長の韓 智寧だと分かった。 表で韓と会うことはあまりなく、私服姿は見慣れない。こうして見ると本当に男みたいだな…と考えるも上役の彼女には言えるはずもなく、間宮は会釈をしながら声をかけた。 「韓さん、こんにちは。何処か行かれてたんですか?」 間宮に韓を素通りする理由はない。 声をかけられた韓はふとこちらを向き、ああ間宮かと声をもらした。 「誰かと思った。まぁな、少し野暮用で心霊スポットとやらに行ってきた」 「心霊スポットって…手引きに載っていた所ですか?」 あの韓が心霊スポットに?とてもじゃないが興味があるように思えない。意外な答えにすかさず返答をした。 「ああ。別に私が行きたくて行ったんじゃないぞ?オカルト好きな知人に写真を撮ってくるよう頼まれてな」 韓の言葉に間宮はえっ!と声を上げた。 「写真て…なにか写りました?心霊写真的な」 人間こういった類の話には好奇心が湧くものである。韓は目線を上にし少し考える素振りを見せ、 「いや、何も」 と切り捨てた。 「やっぱそんな簡単に撮れるものじゃないんですね…少し気になるけど」 肩を上げながらそう言葉にすると後方から声が聞こえてきた。 後ろを確認すると、源氏部下の打平 真珠が走ってきている。 「とーもーねーセンパーイ!!」 間宮と韓の元へと来た打平は、フーッと息を吐き韓の腕に飛びついた。 「智寧センパイひどい!旅館着いたら温泉いこうって約束したじゃないっすかぁ!」 どうやら韓が約束を忘れ出掛けていたらしい。にしてもこの打平の韓に対する態度には少しヒヤヒヤする。これが女同士の距離感か…と考えたところで、韓が口を開いた。 「あ。すまん忘れてた…」 「もぅ!今から行きましょ!そんじゃ祇羽チャン智寧センパイはあたしが連行します」 間宮に向けビシッと敬礼した打平は、韓の腕を引きながら来た道を戻り始めた。腕を引かれている韓はクルリと間宮の方を振り向いた。 「じゃあな間宮」 「はいっ、また後で」 間宮の言葉に片手を軽く上げた韓は打平と共に去って行った。口数少ないイメージだったけど案外普通なんだな…上役の新たな一面を発見した所で、間宮は足を進めた。
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