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3.ドリンク混ぜのプロ
………薄茶色い。
透明で涼し気なコップには似つかわしくない、泥水に似た何かで満たされていた。
「なんか、浮いてる……!」
その泥水には何か未確認生物が生息していた。
白濁したような、透明なような、0.5cm程度の細長い生物。確かにふわふわとコップ内で踊っている。
これを飲めと……!?
しかし戸惑っている場合ではない。
俺には時間がないのだ。
「30秒経過~」
早くもスマホ画面を覗くタケルが、試合開始から30秒経過をお知らせしていらっしゃる。
圧倒的ドヤ顔。憎い。奴が、タケルが憎い。
俺は右手の中でコップをくるくると回し、液体の様子を伺う。
ゆっくりと、その泥水に己の鼻を近づけて匂いを嗅いだ。可哀想。俺の鼻。
…ニオイは、微かに甘味を感じる。独特の香りだ。
確かにいい匂いはしないのだが、吐き気を覚えるほどではない。
変な香りだけど。
その変な香りの中にかすかにだが感じる甘味にすがりながら、そっと……口に、含んだ…。
可哀想。俺の口。
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