融けない氷

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その日の晩。 尋の言うとおり、雪の降る夜でした。 しんしんと天から降り注ぐ雪は、あっという間に辺りを銀世界へと変えて行きます。 裏門の傍にある番小屋。 普段は無人の小さな小屋の中に、若い男の姿がありました。 秋津を待つ尋です。 尋は、静かに時が経つのを待っていました。一刻、また一刻と時は過ぎ、ついに丑二刻となりました。 尋は、小さくため息をついて、窓の外を見上げました。 雪はまだ降っていましたが、勢いは弱まっています。このまま雪が止めば足跡は埋まらず、追っ手に見つかってしまうでしょう。 尋は、諦めたように腰を上げました。 荷物を詰めた包みを背負い、手に行灯を持って、ガラリと引き戸を開けました。 戸を開けた瞬間、尋の目に飛び込んできたのは、行灯の薄明に照らされた美しい姫の姿でした。 「秋津!?来てくれたのか!」 秋津は無言で頷きました。 「秋津…よくぞ決心してくれた」 尋は秋津を抱きしめました。 「さあ行こう。この雪が止んでしまう前に」 二人が歩き出したその時。 屋敷から怒声があがりました。 「姫がおらぬぞ!」 「姫をお捜ししろ!」 「あれは私の見張り番たちです。もう気づかれてしまったのですね」 「急ごう!」 二人は裏門を飛び出しました。
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