プロローグ

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僅かな時間だった。時が止まったような静けさが僕と桐谷さんの辺りを包んだ。 桐谷さんが「……真実って、いつも残酷よ……レイン君。君にその真実を見る勇気があるなら教えてあげるわ……」と、ルージュを動かした。 僕は、まだ若かったのもかもしれない。 真実を、世の中に露呈する事が正しいと勘違いしていた可能性も否定出来ない。 桐谷さんが口にした「残酷」その意味を僕は言葉で理解しても、目の当たりにしていなかったから重みを知り得なかった。 会社を辞める前に先輩から言われた言葉がある。 「雑誌やネットに載っているニュースやスクープなんて氷山の一角だ。取材中の話、都市伝説クラスの噂話なんて山ほどある。 若い時は全部を知りたがるが、君も大人になれば解る。『大人の事情』は絶対なくならない…… 報道されている辺りが、程好い着地点だといつか知るときが来る事を覚えておきなさい……」 先輩と「鎌倉さん」は相対する存在だが僕は桐谷さんの紹介で鎌倉さんを訪ねた…
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