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生まれた時からずっとユイと一緒のことに何も疑問を持たなかったし、ずっと私はユイの中で共に暮してきたのだ。恋を知るまでは、ユイの中から出ることなど、想像もしていなかった。でも、ユイには彼を渡したくないの。
執刀した医師は言葉を失った。
「これは大変珍しい。寄生性双生児ですね。」
私が強く望んだことによって、ユイの体に激痛をもたらし、望みどおりに私は、ユイの外に出ることができた。
でも、私は大切なことを忘れていたよ。私はユイの体の中でしか生きられないということ。
そう、私には名前はないの。ユイの体の中でずっと一緒に時を過ごしてきた。
私はずっとユイと共に生きてきて幸せだったから、ユイに干渉することは一度も無かった。
でも、コウ君だけは、ユイに渡したくなかったの。
盲腸と一緒に切り出された、私の体だった脳の一部と歯と髪の毛はゴミのように捨てられてしまった。
「ユイ、大丈夫か?」
「うん、もう大丈夫だよ。盲腸だったんだって。」
「そっか。でも、すぐ退院できるんだろ?」
「一週間だって。」
「よかったな。」
「うん、でも、私の体の中から、変なものが出てきたらしいの。」
「変なもの?」
「うん、寄生性双生児っていうの。」
「キセイセイソウセイジ?」
「うん、なんか卵子の突然変異だとか。よくわかんないけど。」
「大丈夫なのか?」
「うん、もう取り除いたから平気。」
それから1年後のバレンタインデー。
「なあ、俺たち、あれから付き合って1年になるな。」
「バレンタインデーが記念日なんて、ロマンチック!」
「記念に写真撮るか。」
「うん!」
二人は肩を寄せ合って、スマホを片手に自分達の写真を撮った。
スマホを覗き込んだユイは異変に気付き、きゃっと叫んでスマホを放り投げた。
「どうしたんだ、ユイ。」
「こ、これ・・・。」
ユイの口元の横にもう一つ口が開き、中から乱杭歯が飛び出ていて、べっとりと濡れた髪の毛が顔に張り付いていた。
ユイ、私は体は失ってしまったけど、自由に空を飛べるようになったんだよ。
コウ君は絶対に渡さないって言ったでしょ?
私はたぶんなんにでもなれるんだよ。
たぶんユイにもね。
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