指先に微熱

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病院では、受付や会計やお薬まで、全部をカズマがやってくれた。 学校を出てから病院までは電車とバスでしんどかったけど、帰りは「こんな時くらいはいいんだよ」とカズマは私をタクシーに押し込んだ。 家に帰って来ると、 おでこに冷えピタを貼ったり、処方された薬を飲ませてくれたり、私のスマホからお母さんへ早退のLINEを送ったりしてくれて。 私から離れたのは着替えの時だけだった。 甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるカズマに私も少しだけ甘え、早々にベッドに横になった。 お母さんとの電話を終えて私の部屋に戻ってきたカズマは、私のスマホを枕の横にそっと置いた。 「おばさん、帰りは早くても6時だって」 「あ、うん。………ね、カズマ、あの、もう大丈夫だから」 「うん」 「お母さん帰って来たらタクシー代払う……」 「いいんだよ。さっき母ちゃんからもらってきてっから」 そういえば、お薬を待ってる時におばさんとこそこそ喋ってたかも。 カズマは、「オレの金じゃねぇのがカッコ悪ぃなぁ。早く免許取って車乗りてぇなぁ」なんて、耳の後ろを真っ赤にしながら言っている。 「でも悪いし……」 「オレがそうしたいって思ったんだから気にしなくていいんだよ」 「だって…」 「まただ。”だって“って、昨日もそう言った」 床にあぐらをかいて、 首までしっかり布団をかけて横になる私のことをベッドに肘をついてじっと見つめてくるカズマ。 薄茶色の瞳をうるうるとさせて、 そして、 一言一言を、 一文字一文字を、 探すように紡いでいく。 「だって…の次にくる言葉をさ、今、オレは自分に都合のいいように考えてる。 もしかしたら……って。 それに、熱出したのオレのせいだって思いたい。 違うって言うけど、そう思いたいんだよ。 こうやって二人っきりでいられるのがオレのせいだなんてさ、 変わってっかもしんないけど、そんなんでも今はすげぇ嬉しいって思ってる。 昨日、”ついうっかり“、でお前の手を握ろうと思った訳じゃねぇよ、オレは。 ”だって“の続き、言ってよ。 そしたらさ、オレも言う。 昨日オレが言おうとしてたこと…」
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