指先に微熱

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その後、結局2日も学校を休むことになってしまった。 しばらくぶりな気分で登校すると、 早退した日の、廊下を連れ立って歩いたカズマと私のことが良くない雰囲気で知れ渡っている、とミユから聞かされて、 せっかく元気になったというのに朝からゲンナリとしていた。 そして、昼休み。 『ねぇ夏目さん?ちょっといい?』 お昼ご飯に行こうと席を立とうとした私を、クラスの女子数人がぐるんと囲んだ。 「あっ、うん……何?」 数秒の沈黙の後。 中心に立つ女子が「あの、さ?」と声を発したその瞬間、 「千恵?」 教室の後ろから、私を宝物みたいに優しく呼ぶ声に、 周りの女子が一瞬たじろいで私から少し距離を置いた。 「夏目千恵?」 今度は私の後ろから、さっきと同じ声がして、 私を囲んでいた女子がササッと逃げるように1箇所に集まった。 ふんわりと漂うあの香りにつられるようにゆっくりと振り返った私を、 カズマは一昨日に初めて重なった薄い唇の片側をキュッと上げて見下ろしていた。 私は、 ドキドキしながら今までの封印を解いた。 「なに?カズマ」 見上げたカズマは、ふはっと息を吐くように笑う。 その顔、私は好きだな、なんて、こんな時に胸の奥がきゅうっと熱くなる。 「学食行こーぜ」 「おごりだよね?」 「もちろん。安いしな」 私達を驚いた表情で見ている女子に、 「行っていいかな?ごめんね?」 それだけ言って、先を進むカズマの背中を追った。 「待ってよ!」 「お前が遅ぇんだよ」 後ろの私のことなんか見てないくせに、 ちゃんと私の右手を掴まえるカズマの左手。 今日もちょっとだけ手も指先も熱いのを、 私だけが知っているんだ。 *完*
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