指先に微熱

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さっきより、傘にぶつかる雨粒が大きく強くなったみたいだ。 小さい傘からはみ出していた制服は水分を含んで、冷たく重く肌にへばりついて体温を奪っていく。 「オレさ、」 傘の柄を握る私の手が、カズマにふわりと包まれて、右手が一気に熱を帯びた。 同時に横から聞こえたのは、今まで一度も聞いたことのない優しい声だったのに。 「やっ!!」 反射的に悲鳴のような声を上げてしまった。 「あ、ごめ……」 重なった手に罪は無いのに。 本当は温かかったのに。 何故か、ひどく冷たいと思ってしまった。 怖い、と咄嗟に思ってしまった。 そんなこと一度も思ったことないのに。 私の手から体温を奪って離れていくカズマの手のひら。 スローモーションのように。 ゆっくりと。 そして、 「………ライ…」 「えっ?」 「カズマなんかっ、大キライっ」 勢いよく傘の柄をカズマに押し付けると、溜まっていた雨雫がザッと零れた。 打ち付ける雨が、 泣いてしまいそうな顔を隠してくれた。 二人を覆っていたビニール傘から、 私一人だけがはみ出した。 「おいっ、千恵っ!!」 背中からカズマが私を呼んだような気がしたけど、 強さを増した雨のせいで聞こえなかったふりが出来るからよかった。 親友に嫉妬してイライラして、 幼なじみが急に大人の男の人に見えてドキドキして、 今の自分の全ての感情が受け入れられなくて、 それが怖くて、 恥ずかしくて、 みっともないくらい醜く思えて……。 私は鞄を抱え、 雨で重く冷たくなったスカートの裾を押さえながら、 全速力で家まで走って帰った。
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