指先に微熱

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ふと気づくと白い天井とカーテンが目に入ってきた。 その後に遅れて、 消毒液の臭いや、 自分の体温が午前中よりも高いことや、 サラサラし過ぎの白い掛布団や固い枕や、 やけに静かな空間に入り込む校庭からの拡声器で指示を出す先生の声や、 隣で腕を組んで舟を漕ぐカズマに気がついた。 先生に怒られて色を直したのに抜けてきちゃった褐色の髪は、耳の後ろで小さくはねて、 頼りなさそうなのに私には充分なくらい男の人を現している腕は、肘のところでクシャっと丸まったシャツと同じくらい白い。 声にならない声が喉の奥で行き場を失った。 その方が都合がいい、と思った。 今何かを伝えようとすると、 躊躇うことなく私は、 「カズマが好き」と。 「例えミユを好きだとしても」と。 「前から好きだったんだよ」と。 そう零してしまう気がした。 そうならないように。 “頭と身体が熱を持つ今、単にその熱に浮かされてるだけ” そう結論づけて掛布団に手をかけ上半身を起こすと、 「起きた?」 腕を組んだままのカズマが私を上目遣いで不安気に見つめ、 「どっか痛いとこは?気持ち悪いとかは?」 矢継ぎ早にそう聞いた。 首を横に数回振った私見て、潤んだ目がゆっくりと弧を描いた。 「5時間目、サボったの?」 「アキヨシ先生にお願いしてちゃんと許可もらってっから大丈夫」 「私どのくらい寝てた?」 弱っちそうな腕に巻き付く時計をカズマがチラッと覗き見て「30分くらいかな」と呟いた。
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