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「カッコイイし、ドライな感じもいいし」
「ふーーん」
「でも、長瀬先輩には敵わないかな~」
「同じ土俵に置いちゃダメでしょ。全然タイプが違うもん!カズ……タニくんとは!」
“谷崎一真という人間とは距離を置いていますよ”という、私なりのアピールは、無駄かもしれないけど、でも随分マシだ。
それまではずっとカズマだった。
タニくんと呼ぶようにしたのは、高校に入学してからだ。
そうじゃないと、
『谷崎くんと仲いいよね、連絡先教えて欲しいって伝えてくれないかな』
『谷崎くんってさ、どんな女の子が好みか聞いてくれないかな』
『谷崎くんって』
『谷崎くんって』
『谷崎くんって』………
だから、呼び方を封印した。
そんなことばかり聞かれてしまう私は、
一応、女子の付き合いもあるからと、本人に聞いてはみるんだけど。
「連絡先?イヤだね」
「好きになった子がタイプ」
いつだったか、あまりに私がしつこく聞いたからなのか、酷く怒ったことがあった。
「は?髪の長さ?」
「うん。長いのと短いのだったらどっちが好き?」
「つか、何で直接聞きに来ないわけ?」
「あんたが取っつきにくいからじゃない?」
「オレは普通。それにお前だって普通に喋ってくるじゃん」
「私はほら、幼馴染みだし……」
「…………ふーん」
「で?」
「何が?」
「…答え、どうすればいい?」
「答えたくない」
キレ気味でそう言って嫌そうな顔になってからは聞くのを止めた。
そのくらいなら、どうにか耐えてきた。
でももっと辛かったのは、2年生になると頻繁に耳に入ってきた声だった。
『谷崎くんとよく喋ってるあの女、何なの?』
『谷崎くんにまとわりついて何様のつもり?』
そんな陰口なんてもうたくさんだ。
いっそのこと誰かと付き合ってくれたら、そんなことも聞かれなくなるから清々するのかな………。
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