狩り

4/4
前へ
/4ページ
次へ
家に帰ると晩御飯の準備をしていた、"よめ"と既に小学校から帰ってきて晩御飯の手伝いをしている"むすめ"が出迎えてくれた。 「あなた、おかえりなさい」 「パパおかえり~」 やはり幸せだ……よめとむすめの喜んでいる顔を見るだけで自然と笑顔になる。仕事終わりで疲れているにも関わらず俺は笑顔で「ただいま」と返していた。 「パパ~今日は何を狩ってきたの?」 やっぱり親の仕事が気になる年頃だな……毎日のニュースで俺の仕事の成果が流れるから気になっていてこうしていつも催促される…… 「テレビをつければニュースで見れるはずだよ。」 「晩御飯を食べながらパパのお仕事を見ましょう。今日はご馳走よ」 印刷会社である親会社から届いた株主優待のステーキを焼き上げ、晩御飯の用意をテキパキと済ませたよめは、みんなが座るとリモコンでテレビの電源を入れる。 画面がつくとちょうど夕方のニュース時間のようだ。俺の狩りの様子も映っているだろう。 『次のニュースです。本日は狩りが行われました。そしてこちらのVTRが狩りの様子です。』 画面が切り替わるとお昼に来ていた公園が映っており、団体の少し後ろの方で『反対!!』と書かれたプレートを持った俺がリーダーに合わせて「反対だ!!」「そうだ!そうだ!」「うぉぉぉぉ!」とカメラに向かって叫んでいた。 『本日行われた狩りにより、嫁と娘の漢字が狩られました。狩られた理由としては漢字で女に家で嫁と良い女で娘と、どちらも女性のあり方を決めつけて女性を軽視するような言葉であるとされたからです。政府はよめ、むすめに充てる新しい漢字の開発を進めており、決まるまでは平仮名で使用するようにと呼びかけています。また一部の専門家は言葉の絶滅を危惧する発言をしているようです。』 「まったく専門家もいい加減ね~絶滅なんて馬鹿げているわ。」 「ああ、そうだな。」 そう俺も馬鹿げていると思う……いくら政府が新しい言葉や漢字を作っても批判意識や偏見の心が無くならない限り、言葉は改訂されていくに決まっているだろ……得するのは本や雑誌などで言葉を訂正される度に何度も何度も依頼されるうちの親会社である印刷会社ぐらいなもんだろな。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加