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ドアが閉まって電車が動き出すとき、ホームにいる人の顔や駅名が書かれた看板に目を凝らす癖がある。
どんどん速く流れていく景色に抗って意地でもピントを合わせてみたり、逆に波にのって残像をただぼんやり目に映らせてみたり、を交互に繰り返す遊び。
昔読んだ本の主人公は、抜群の動体視力を武器に、不可能とされた飛び込みの技を決めてみせた。
その人の目には、すれ違う電車内の乗客の顔が一人一人ハッキリ見えるという。
かく言う私はそんな大それたことができる訳でもない。
ごくごく普通の、一般人の目。
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