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雪は溢れそうになる涙を堪えた。
帰ろうかなーーー最初から望みの無い『告白』なんて無意味だ。
まさか告白せずに失恋なんて、
初恋は叶わないっていうあれは、
真実なんだ、きっと。
「……帰ろ」
雪はポツリと呟いた。
途端に、雪のスマフォが大音量で鳴る。
着信を見ると、お母さんと表示。
雪は慌てて、小さな声で電話に出る。
「な、何?」
『あ、ゆき~?悪いんだけど、帰りに
牛乳買ってきてくれる~?』
間延びした母・舞子の声に雪は眉を潜める。
「はいはい、牛乳ね、わかりました」
小声で囁き、電話を切る雪。
全く、お母さん、タイミング悪すぎ。
「ビックリしたな」
「ほんと、ビックリしたよ……あ!」
雪が上を見上げると、いつのまにか譲がいて、雪を見下ろしている。
「おまえ、何してんだ?」
「え、あ、その~お母さんと電話?」
譲は目をぱちぱちさせてから、ぷっと
噴き出す。
「な、何?」
「なーんだ。てっきり、待っててくれたのかと思った」
「え?」
「告白終わるの」
「あ……、あのそれは」
「立ち聞きしてたろ。白い息が見えてたぞ」
「あ~、あの、ち、ちょうどね通りかかっただけで、邪魔しちゃ悪いかな~と思ってさ」
雪は後ろにチョコを隠したまま、咄嗟にごまかしてしまう。
「よりにもよってさっきの
お前に聞かれるなんて……ダサすぎ」
譲は手で顔を隠すように抑えながらボソッと呟く。
「……え?」
「いや、なんでもねー」
と、譲は渡り廊下の入口に座り、サッカーシューズを脱ぎ、上履きに履き替え始める。
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