20人が本棚に入れています
本棚に追加
譲を寒空の中、
一時間も待ってたんだよ。
チョコを渡したくて、10年の想いを伝えたくて、探しに来たんだよ。
本当は今こそ、そう言わなきゃいけないのに。今がそのタイミングなのにーーー。
私は、なぜかチョコ隠してしまった。
その時だ。
北風が私達の間をひゅるっーと音を立てて吹いてきた。
「寒っ……」
「寒いな~。帰るか。お前、誰か待ってんの?」
「あ……ううん」
あんたを待ってたとは、とても言えない。
「用済んでるなら、一緒に帰ろうぜ」
「あ、でも……待ち合わせしてるんでしょ?」
「誰と?」
「誰とって……さっきの子に言ってたじゃん。す、好きな子と約束してるって」
雪は好きなのところで言葉が詰まりそうになりながらも、やっとの思いで言葉を繋いだ。
動揺してるの、譲にバレちゃったかな。
「あ~ああ。それは、口実。俺、好きなやつからしか、チョコ欲しくないしさ。……けど、マジでビックリしたな」
「?」
「…………本当にお前に会えるなんてさ」
「え?」
譲は瞬きもせずに雪を見つめてくる。
雪はその言葉の意味に気がついた瞬間、顔が真っ赤になり、俯いてしまう。
『好きなやつ、いるんだ』
『この後、そいつと会う約束してる』
って、ことは。
譲の好きなひとってーーー。
雪が譲にそれを確認しようと、口を開いた時、雪のスマフォがまたもや大音量で鳴り出す。
「…………」
最初のコメントを投稿しよう!