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「ご、ごめんね」
「ううん」
譲はニッコリと笑ってくれて、立ち上がる。
「帰ろうぜ、買い物付き合うよ」
「え?」
「喉渇いたから俺も飲み物買いたいし……もう暗いから危ないし」
譲は最後は独り事のように呟くと、スポーツバッグを肩に背負い、さっさと歩き出す。
「あっ………待ってよ」
雪は慌てて譲の後を追う。
二人が校舎の外に出た時、チラチラと雪が降り始める。
「あ~、なんか腹減ったな~」
譲は白い息を吐きながら言う。
「雪、なんか食うもん、持ってない?
俺、今日シュート4本も決めてさ、すげ~活躍したから昼の弁当だけじゃ足りなくて」
「それ、自分で言う?」
雪は思わず笑う。
そして、思い出す。
今、隠すように持っているチョコ入りの紙袋の事を。
『俺、好きなやつからしか、チョコ欲しくないし』
譲のさっきの言葉が頭の中に響く。
雪はゆっくりと歩みを止めた。
譲も怪訝な顔で立ち止まる。
「どうした?」
雪はゆっくりと口を開いた。
生まれて初めての『告白』を意味する行為に心臓が飛び出しそうだ。俯いたままで譲の顔が見られない。
「……良かったら食べる?お腹の足しになるか、わ、わからないけど…………」
雪はチョコを紙袋から取り出して、譲に差し出した。
透明なラッピングシートにくるまれ、ピンクのリボンがかけられたトリュフ。
『好き』という名の二粒のチョコ。
「これ、お前の手作り?」
「……うん」
「………俺が食っていーの?」
雪はこくりと小さく頷くのが精一杯で。
本当はさっきの女子みたいに、次の言葉を言わなきゃいけないのに、何も言えずに立ち尽くしてしまう。
すると、スッと譲の手が伸びてきて雪の手からチョコを取り上げた。
雪は思わず譲を見上げた。
譲はニッコリと微笑みながら、リボンを引いて、雪の想いを一粒取り出し、パクっと食べた。
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