突然起こった悲劇

6/9
前へ
/9ページ
次へ
 確か俺は、あの箱を一度は開けたものの、まだ一口も食べてはいない。  しかも、生チョコレートだというのに、暖房の効いたオフィスに出しっぱなしにしていたのも、今の俺の現状にはもってこいだ。  あとは……どう、うまくやるか……だ。  俺は、周りに「ちょっと顔が火照るから、少しだけ窓を開けさせてくれ」と一言断り、数センチだけ開けたままにさせてもらうと、シャーッと勢いよくキャスターを滑らせ、椅子ごと自分のデスクへと移動し、茶色の箱へと手を伸ばした。  手前に持ってこようとして、手にかけていた茶色の箱が落ち、中からチョコレートが飛び散った。  落ちていくチョコレートを慌てて掴もうとしてバランスを崩した俺は、ガッシャーンと派手な音をたてて椅子から転げ落ちた。 「うわっ! ヤバッ!」  まるでコントのように、床に落ちたチョコの上に尻もちをついてしまった俺。  ねっちょりとした感触が尻に伝わる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加